1型糖尿病について
1型糖尿病は、“インスリン”というホルモンが体から分泌されなくなる原因不明の疾患です。
生命の維持に必要なインスリンが欠かせないことから、インスリン依存性糖尿病(Inslin dependent diabetes mellitus:IDDM)と呼んだり、小児期に発症することが多いことから、小児糖尿病と呼ぶこともあります。
多くの方の場合、体重減少、多飲、多尿、倦怠感(ぐったりと疲れやすい様子)といった症状で発症します。
インスリンは、血液中に流れている糖を付近の細胞の中に取り込ませるという、とても大切な働きを持っています。
体中の細胞は、このようにして取り込んだ糖を利用して、細胞の機能を維持していくことができるのです。
しかし、1型糖尿病の方の場合、何らかの原因でこのホルモンが分泌される膵臓のβ(ベータ)細胞が破壊されているため、インスリンの分泌ができません。
したがって、インスリンを投与しなければ、細胞への糖の取り込みがされず、血液中の糖が増加、すなわち血糖値が上昇し、体がうまく機能しなくなっていきます。
現在、日本には数万人の1型糖尿病の患者さんがいると言われており、インスリンの注射を日々続けておられます。
原因について
最も有力とされている説は、ごくありふれたウイルスに感染したことが引き金となり、主に自己免疫的機序により膵臓にあるβ細胞が破壊されていくというものです。
つまり、本来であれば外からやってきた異物を異物とみなし、排除しようと働くはずの免疫が、何かのウイルス感染をきっかけにして、自己の正常な組織や細胞、すなわち膵臓のβ細胞を攻撃してしまうことにより症状が出現すると言われています。
しかし、ウイルス感染が引き金とは言っても、1型糖尿病が感染することは一切ありません。
それは、その感染に関与したとされるウイルスは体からすぐに消えてしまいますし、そのウイルスに感染したとしても1型糖尿病を発症しない人の方が圧倒的に多いからです。
原因と考えられているウイルスは、エンテロウイルスやコクサッキーウイルスといった子どもがよくかかる風邪のウイルスであり、全く特殊なものではありません。
現代の医学においても1型糖尿病の明確な原因は不明です。
発症について
多くの方の場合、体重減少、多飲(頻繁に飲み物を飲む)、多尿(おしっこの量が極端に増える、おねしょで気付かれることも多い)、倦怠感(ぐったりと疲れやすい様子)といった症状で発症します。
低年齢の場合には体調不良を自ら訴えることができないため発見が遅くなることが多く、ケトアシドーシスという状態となり、意識不明、時には死に至ることもあります。
発症は数週間で急に起こってくることが多いのですが、偶然にも検査が早く行えたような場合、例えば、学校検尿などの定期検査で見つかった場合には、特に何の症状も見られないこともあります。
発症の頻度は1年間で10,000人に1~2人と言われています。
日本を含めアジアにおいてはこのくらいの頻度と言われていますが、ヨーロッパやアメリカではこれより多く、10,000人に20人程度、特に北欧のフィンランドでは35人という統計があります。
対処法
対処法は、枯渇したインスリンを補うために、インスリンを投与することです。
現在、インスリンを投与する方法で最も優れているのは注射です。
注射には2種類あります。1つはペン型インスリン注射と言い、ペン型の持ち運びできるインスリンの先に短い針をつけ、体に注射します。
もう1つは持続皮下インスリン注射(CSII)と言い、携帯電話程度の器械にインスリンの入った容器を装着し、やわらかいチューブを皮膚に刺しておいてボタン操作によりインスリンを皮下に投与します。
3日に1回のチューブの交換は、自分や家族が行います。
そのときに針を使用しておなかやおしりに穿刺しますが、バネじかけで針を一瞬で穿刺する器具があり、痛みは少なくなるように工夫されています。
臨床研究への協力のお願い
当院は、1型糖尿病の患者さんが多く通院されています。日本は世界の中で1型糖尿病の発症率が特に低いため、患者像、インスリン治療法、インスリン量、合併症進展の有無などのデータを収集しにくい状況にあります。
当院は、大阪公立大学附属病院小児科やインスリン治療研究会という、日本で小児1型糖尿病を重点的に治療している医療施設が集まって行う研究会にて、経時的な患者さんの治療データを集積する研究に協力しています。
皆様方におかれましては、研究の趣旨をご理解いただき、研究へのご協力を賜りますようお願い申し上げます。研究への参加を希望されない場合には院長にその旨をお伝えください。ご協力よろしくお願いいたします。