低身長の診断
低身長を伴う病気には、ホルモンの異常、染色体の異常、骨の異常、内臓の疾患、心理社会的要因など様々な原因が考えられます。
何が原因になっているかを見極めるには、問診、成長曲線、血液検査などを総合的に見て絞り込む必要があります。
具体的な流れ
◎初 診
問診
- 生まれた時の状況(身長・体重、在胎週数など)
- 成長の記録の確認
- 食事や生活習慣について
- これまでの病気、薬剤の使用歴などをお尋ねします。
身体計測
現在の身長・体重がどれくらい平均から離れているかチェックします。
成長曲線
母子手帳や健康手帳の「成長の記録」をもとに成長曲線を作成します。
血液検査
- まず主要な臓器に異常がないか調べます。心臓、腎臓、肝臓、腸などに異常があると成長を阻害することがあります。
- 成長ホルモン、甲状腺ホルモン、甲状腺刺激ホルモンがどのくらい分泌されているかを調べます。
- プラダーウィリー症候群や、ターナー症候群が疑われる場合は、染色体検査もあわせて行います。
尿検査
尿中タンパク質、糖、潜血、白血球、赤血球を調べます。 慢性腎不全も低身長の原因になります。
レントゲン検査
手首のレントゲン写真から骨の発育の度合いを調べます。
手首のレントゲン写真で骨端線の開き具合を調べることで、骨年齢がわかります。骨年齢が若いほど治療の効果が期待できます。
成人すると骨端線は閉じて、もうそれ以上伸びなくなります。
◎2回目外来
初診の検査結果から総合判断します。
低身長以外の異常が認められない場合
体質的なもの、家族性のものと考えられます。治療は行わず、年1回の外来診察で経過をフォローします。
成長ホルモン分泌不全性低身長などの疑いがある場合
- 極度の低身長
- 成長率の低下
- 骨年齢が実際の年齢に比べかなり若い
- IGF-1が低い
※IGF-1:成長ホルモンの刺激を受けて分泌される成長因子
さらに精密検査を行います。
精密検査
成長ホルモン分泌刺激試験
成長ホルモンを分泌する脳下垂体を内服薬などで刺激して血液中の成長ホルモン濃度を一定時間ごとに採血し測定します。
頭部MRI
脳腫瘍の有無や生まれつきの脳下垂体異常が疑われる場合に行います。脳腫瘍が見つかった場合、成長ホルモン治療の前に外科的な手術が必要になります。
24時間蓄尿など
低身長の治療
低身長の治療方法は多くはありません。成長ホルモン治療が認められている下記の病気では、成長ホルモンを補うことにより低身長の治療を行います。また、甲状腺機能低下症では内服薬で適切に治療ができます。
成長ホルモンによる治療が認められている病気
成長ホルモン分泌不全性低身長症
文字通り成長ホルモンの不足により低身長になる病気です。
不足している成長ホルモンを補うことで低身長を改善することができます。
ターナー症候群における低身長
ヌーナン症候群における低身長
プラダーウィリー症候群における低身長
SGA性低身長症(子宮内発育不全)
生まれたとき在胎週数に比して出生身長や体重が小さく、3歳までに追いつき成長がみられなかった場合、条件を満たせば成長ホルモン治療を行うことがあります。
軟骨無形成症、軟骨低形成症における低身長
慢性腎不全における低身長
成長ホルモン治療とは
成長ホルモン製剤
遺伝子組み換えによる天然型ヒト成長ホルモンを使用します。
治療の開始時期
思春期が始まる直前の身長が最終身長に関係しているといわれ、就学前にひと通りの検査をして思春期までに平均身長に近づけられるよう、できる限り早く始めるのが理想です。
治療の方法
健康な子どもは、夜眠っている間に成長ホルモンが多く分泌されます。そこで、夜寝る前に成長ホルモンを週6~7回皮下注射し、健康な子どもの成長ホルモンの分泌状態に近づけます。今は、在宅で痛みも少なく安全正確に注射できる注射器が開発されています。
健康な子ども
健康な子どもでは夜間に成長ホルモンの分泌が多くなります。
成長ホルモン分泌不全性低身長症
成長ホルモン分泌不全性低身長症の子どもは夜間の成長ホルモンの分泌が少なくピークもありません。
成長ホルモン分泌不全性低身長症(成長ホルモン治療中)
成長ホルモン治療中では健康な子どもと同様に、夜間の成長ホルモン量がピークになります。
治療の効果
最初の1年に最も効果が現れ次第に緩やかになります。また、糖や脂肪の代謝も正常になります。
治療の終了
身長の伸びや骨年齢により治療の中止を決定します。